こんにちは。リナークのニシザワです。

在庫管理はすべての企業様が直面する一大課題であると考えています。適切な在庫レベルを維持することは、企業の生産効率、顧客満足度、そして最終的な利益に大きな影響を及ぼします。しかし、何千ものSKUを抱える企業にとって、この課題を適切に管理することは容易ではありません。そこで、在庫管理を効率化するための強力なツールであるFileMakerの活用事例を紹介します。

Excel管理や紙管理からの脱却、ローカル稼働になっている在庫管理をFileMakerプラットフォームで展開することにより、基本的な機能からスモールスタートすることができます。そして、システムやビジネスの変化やニーズによってスケールアップや拡張していくことができる環境を構築することができます。在庫管理における基本的な機能や高度な機能を実装することで、よりレベルが高い在庫管理を実現することができるでしょう。

はじめに

在庫管理は、製造業や小売業において重要なビジネスプロセスの一つです。商品が適切なタイミングで適切な数量だけ在庫として確保されているかを確認することで、過剰在庫や在庫切れを防ぎ、業績を最適化することが可能となります。しかし、在庫管理は多くの課題を抱えています。データの一元化、リアルタイムな在庫情報の取得、在庫の予測と調整など、これらを適切に行うには時間と労力を必要とします。

ここで、FileMakerの登場です。FileMakerは、多くの企業がこれらの課題を解決するために使用しているソフトウェアです。その最大の特長は、ビジネスプロセスに合わせてカスタマイズが可能なデータベースアプリケーションを短期間で開発できることです。在庫管理においては、商品の入出庫の履歴、現在の在庫状況、将来の在庫予測など、必要な情報を一元化して管理することが可能になります。これにより、業務の効率化だけでなく、より高度な在庫管理を実現することが可能となります。

今回の記事では、FileMakerを用いた在庫管理の効率化について詳しく解説します。具体的な機能や利用方法、実際の利用事例を通じて、FileMakerがいかにして在庫管理を効率化し、ビジネスに貢献するのかをご紹介します。

在庫管理に必要な機能

在庫管理における基本的な機能から、より進化した機能まで、在庫管理のレベルによって必要な機能が異なってきます。ここでは、一般的に必要な機能とあったら便利な機能を紹介いたします。

基本的な機能

在庫追跡

製品の入庫から出荷までの一連の流れを一元的に追跡できます。これにより、リアルタイムでの在庫状況の把握が可能となり、適切な在庫レベルを維持する手助けとなります。

商品情報の管理

商品のSKU(Stock Keeping Unit)、価格、在庫数、サプライヤー情報など、必要な商品情報を一元的に管理できます。これにより、情報の一貫性を保ちつつ、商品に関する詳細な情報を容易にアクセスできます。

発注・出荷管理

発注のスケジューリングや、出荷のステータス追跡など、関連する作業を一元的に管理することができます。これにより、作業の効率化とエラーの削減が可能になります

高度な機能

在庫予測

過去の販売データと在庫状況を分析することで、将来の在庫需要を予測することが可能です。これにより、在庫切れや過剰在庫を防ぐための計画を立てやすくなります。

自動発注

在庫レベルが設定したしきい値を下回った場合、自動的に発注を行うことができます。これにより、在庫切れを防ぐだけでなく、発注作業の手間を省くことができます。

レポートとダッシュボード

在庫状況、販売パフォーマンス、発注状況など、各種のデータに基づくレポートを作成することが可能です。また、これらの情報を視覚的に表現するダッシュボードを作成することもできます。これにより、事業のパフォーマンスを一目で理解し、データに基づいた意思決定を行うことが容易になります。

これらの機能により、在庫管理の効率化だけでなく、業務全体の最適化を実現します。

在庫管理システムの実装例

ここでは弊社にて開発した在庫管理システムの事例をお伝えいたします。

クライアント

売上高30億円規模の製造業様で受注品、標準在庫品やアッセンブリ品を扱っており、SKUだと1万点を超える商品を扱っている企業様になります。
そのクライアント様では、基幹システムから出力できる在庫状況のレポート類で在庫管理をされていました。その基幹システムではレポートの出力制限もあり、直近1年間の数字しか閲覧することができずに、各個人で管理しているExcelが主力的な在庫管理ツールとなっていました。しかし、商品数が1万点を超えることは人間が管理できる限界点はすでに超えていました。また、限界点が超えていることで管理レベルが下がり、機会損失(在庫不足・過剰)といった財務面でも影響が発生していました。

導入の背景

その問題を解決するために、自社にマッチした在庫管理システムの検討をスタートさせましたが、価格面、自社の業務プロセスや自社製品に合う在庫管理システムがなく、自社で開発(内製化)を検討されているタイミングで弊社にお声をかけていただきました。

提供したソリューション

弊社がご提供したシステムでは在庫管理の機能だけではなく、下記の機能をご提供いたしました。

  • ロケーション管理
  • 発注管理
  • トレーサビリティ管理

上記に記載した機能は一例ではありますが、在庫管理、製造および出荷に関連する機能を包括的にご提供することで、例えば上記に挙げた機能を中心に課題を解決することができました。

在庫追跡

正確な入出庫管理が実施できるようになったことで在庫追跡が可能になり、棚卸の正確性向上、出荷した商品のロット追跡、在庫数の信憑性が向上したことで簡易的な問い合わせがなくなりました。

商品情報の管理

輸出時に必要な商品サイズや情報を商品を管理している担当者が直接、自社物流に問い合わせしていましたが、商品サイズ情報を一元管理することで問い合わせを削減することができました。また、商品情報のアップデートを随時実施することで、いつでも・どこでも・誰でもが最新の情報を閲覧することが可能になりました。

発注・出荷管理

入出庫の動きをトレースできたことで、今までレポートやExcelで確認していた数字をダッシュボードで確認することが可能になり、いつのタイミングで必要なのか、また季節性はあるのかなど紙では見えなかった情報が見えるようになり、機会損失を減少させることに成功しました。

在庫予測

過去や現在の販売状況のトレンドをリアルタイムで視覚的に確認することができるようになったことで、販売と生産の両方の視点から生産量や販売をフォローできる体制が構築できました。また、販売部門からフォーキャストを活用した生産予測を実現しました。

自動発注

各商品に最低発注数や在庫レベルを設定し、そのレベルを下回った場合には、自動的に発注する、もしくは発注候補として注意喚起を促すことで、常に誰かがレポートを確認しながら発注をフォローしなくても良い体制を構築できました。

レポートとダッシュボード

必要な情報をExcelや紙で管理するのではなく、データが一元管理できたメリットを最大限享受すべく、年次計画、月次計画、週次計画に落とし込むためにデータを利活用したダッシュボードを構築し、いつでも・どこでも・だれでも計画や実績にアクセスできる環境を構築することに成功しました。

導入後の結果

発注や在庫管理に関わる業務時間の短縮、在庫精度の向上、そしてデータの利活用により、システム導入から7年間で、延べ5,030万円(720万円/年)の削減に貢献しました。

FileMakerを用いた在庫管理のメリット

在庫管理は事業運営の核心を成し、その効率と正確性は企業の生産性と利益に直結します。ここでは、FileMakerを利用した在庫管理が、そのアクセシビリティ、ユーザービリティ、スケーラビリティから如何にメリットをもたらすかについて詳述します。

アクセシビリティとユーザービリティ

FileMakerはiPadやiPhoneなどの一般的なデバイスで利用可能であり、高額な作業端末を必要としません。これにより、スタッフが既に使い慣れたデバイスをそのまま使用することが可能となり、導入の敷居を大幅に下げます。さらに、直感的なユーザーインターフェイスにより、研修時間を最小限に抑えつつ、スタッフ全員が迅速にシステムを使いこなすことができます。

スモールスタートとスケーラビリティ

FileMakerはスモールスタートが可能であり、初期投資を抑えつつビジネスニーズに応じてスケールアップすることができます。初期段階では必要最低限の機能から始め、ビジネスやシステムが成長し、ニーズが変化・拡大するにつれて機能を追加・拡張していくことが可能です。これにより、現在だけでなく未来のビジネスニーズにも対応することが可能です。

効率的な在庫管理と自動化によるコスト削減

全ての在庫データを一箇所で管理し、リアルタイムで在庫の動きを追跡することが可能となります。これにより、過剰在庫や在庫切れを防ぎ、適切な在庫レベルを維持することができます。また、一部の在庫管理プロセスを自動化することで、手作業によるエラーや時間の浪費を大幅に削減し、全体的な運用コストを抑えることが可能です。例えば、在庫が一定レベルを下回った際の自動発注などが可能となります。これらの効率化と自動化は、在庫の適正化、エラーの削減、業務の効率化を実現し、企業の収益性の向上に寄与します。

データ可視化による効果的な意思決定

ダッシュボードやレポートを用いて、在庫状況、販売動向、発注状況などを一目で確認することができます。これにより、データに基づいた迅速かつ正確な意思決定を行うことが可能になります。最新の状況に基づいて適切な対応をとるため、これらの情報はリアルタイムで更新されます。

これらのメリットは、FileMakerを用いた在庫管理が、スモールスタートからビジネス成長まで、あらゆる段階の事業に対して効率的かつ効果的なソリューションを提供できることを示しています。そして我々の強みは、FileMakerの導入・カスタマイズに関する豊富な経験と知識を活かし、お客様一人ひとりのビジネスニーズに最適なシステムを提供することです。

さいごに

在庫管理は製造業や小売業など、商品を取り扱うすべてのビジネスにとって重要な業務の一つです。しかし、商品数が膨大になり、人間が管理できる限界を超えた時点で、在庫管理が財務面に悪影響を及ぼすリスクが高まります。一方で、専門の在庫管理システムを導入するためのコストは決して小さくはありません。そこで、FileMakerを用いた在庫管理システムがその解決策となるのです。

例えば、売上高30億円規模の製造業で1万点を超える商品を扱っているクライアント様に対して、弊社はFileMakerを用いた在庫管理システムを提供しました。その結果、在庫追跡の正確性が向上し、在庫数の信憑性が向上したことで、簡易的な問い合わせがなくなりました。また、商品情報の一元管理が可能になり、いつでもどこでも最新の情報を閲覧することが可能になりました。さらに、発注・出荷管理も効率化され、機会損失を減少させることに成功しました。

このようにFileMakerを用いた在庫管理システムは、業務プロセスの効率化、コスト削減、そしてビジネスの成長を実現する強力なツールとなります。FileMakerは、コストパフォーマンスに優れ、ユーザビリティが高く、自社の業務に合わせてカスタマイズできるというメリットがあります。これらの特性により、FileMakerは在庫管理をはじめとする多様な業務に対して、最適なソリューションを提供できるのです。


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