こんにちは。リナークのニシザワです。
この発表を見ると企業が内製化に求めていることと阻害要因の動向が分かります。
内製化要因:開発コストの削減と迅速化。
阻害要因:IT部門の人手不足。
そして、”企業の方針が内製化の方向という回答は54.4%”であることがアンケート結果から分かります。
はじめに
現代のビジネス環境はデジタル変革が進展し、ソフトウェア開発が企業の中枢を担う時代へと移行しています。企業は開発プロジェクトを内製化するか、外部に委託するかという重要な選択を迫られています。この選択は単なる開発プロセスの問題に留まらず、コスト、速度、効率性など、ビジネス全体に大きく影響を及ぼすテーマ性を持っています。
ガートナージャパンが2023年1月に発表した調査によれば、ソフトウェア開発の内製化は日本国内の多くの企業で推進されており、その主な推進要因として開発コストの削減と迅速化が挙げられています。しかし、その一方でIT部門の人手不足が内製化の最大の阻害要因となっているという課題も明らかにされました。
今回の記事では、私が内製化で三十数年前から稼働していたシステムをFileMakerプラットフォームでリプレイス開発した体験から、内製化の”苦悩”をキーワードにお伝えします。
そして、企業の動向と人材の方向性、認識性の違いから苦しみ抜いた経験をもとに、ホワイトな環境で実践的に内製化を進めることができるステップをご紹介します。
内製化の誤解と現実の苦悩
ソフトウェア開発の内製化は、一見するとコスト削減や迅速化などにメリットがあるように見えますが、その背後には多くの誤解と隠れた苦悩が存在します。
コスト削減の誤解と苦悩
誤解
内製化によって外部委託(アウトソーシング)費用を削減できる。
苦悩
人材の育成や管理、インフラ整備など、意外と見過ごされるコストが存在する。
これは、内製化を担当するスタッフの業務時間に影響します。
なぜならば内製化をする場合、その担当するスタッフの多くは既存の仕事を抱えたまま、内製化も担当します。
そのため、業務量の増大により残業が増える要因になります。
プロジェクト速度向上の誤解と苦悩
誤解
自社の開発チームならば即座にプロジェクトを開始できる。
苦悩
経験不足やプロジェクト管理の課題で、進行が遅れることがある。
プロジェクト管理やシステム構造が正しく理解しなければ、システムの方向性が欠落します。その結果、立ち上げが早くてもその先にあるステップに進むときに、体制や構造にゆがみが生じ、結果的にプロジェクトの停滞を発生させる要因になります。
ソフトウェア品質管理の誤解と苦悩
誤解
社内に担当者がいれば、品質を高く保てる。
苦悩
外部の視点が欠けることで、予期しない問題が発生することがある。
FileMakerプラットフォームはローコード開発ができるプラットフォームであり、簡単なソリューションであれば素早く作ることができます。その結果、開発スピードが速く、その効果を素早く体感することが可能です。
つまり、費用対効果を素早く生み出すには、FileMakerプラットフォームは非常に良い選択です。
しかし、モデリングが正しくなければソリューションの応答性や拡張性が損なわれる要因になります。
このように内製化にチャレンジしてみるとメリットと考えていたことが隠れていた苦悩に繋がり、いつしか内製化の機運が停滞していくことでしょう。
リソースの不足
このように内製化にチャレンジしてみるとメリットと考えていたことが、本当は苦悩に繋がっている部分が見えていきます。
そして、その苦悩に続く問題として、リソース不足が発生します。これは、しばしば致命的な問題として浮上します。
内製化プロジェクトの進行にあたって、そのプロジェクトの大きさに比例して人材不足は即座に表面化します。既存のチームに適切なスキルや経験が欠ける場合、システム開発の遅延や品質の低下が生じます。さらに業務量の増大や適切な開発環境と求められるスキルの欠如がプロジェクト全体の停滞を招くこともあります。
また、大きいプロジェクトになると利害関係者が多くなり、全体の戦略的視点を欠如させる場合があります。そして、いつしかプロジェクト全体の方向性を見失う恐れもあります。このような状況を克服するためには、内製化の誤解と現実の苦悩を深く理解する必要があります。
リソースの不足は内製化の課題であり、この問題の解決がプロジェクト成功への鍵を握ります。適切なリソースを確保するためには実践的なステップを構築することで、この問題を乗り越え、成功へと繋げることが可能です。
ホワイトな環境で内製化を実践するためのステップ
苦悩やリソース不足を解消し、ホワイトな環境で内製化を進めるためには、以下の項目に注力すれば良いのです。
小さく始める
大規模なプロジェクトではなく、小規模で実現可能なプロジェクトから始めます。このアプローチにより、リソースの問題を和らげつつ、成功の経験を積み上げることができます。
例えば、システムを利用する人数が少なく、かつ他のシステムに影響が発生しない、もしくは影響が少ない業務をシステム化する。
部分最適化で良い
最初から全体最適化を目指すのではなく、部分最適化で進める方針も有効です。部門やプロジェクト単位での成功体験を積み重ねることで、徐々に全体の効率を向上させることが可能です。
例えば、Excelで管理している情報をシステム化して、情報を共有できる環境を構築する。また、同じ情報を様々なところに入力している作業(重複入力)を、一度だけ入力することで情報が管理・共有できる環境を構築する。
人材の育成と教育
リソース不足を解消するために内部での人材育成に焦点を当てます。ひとりからでも始めて、その知識を社内で共有し、多くのメンバーが参加できる環境を作ります。
例えば、メンバーが業務を改善する体験を経験することで、その体験成功がよりよい改善提案に繋がり、効率化したい情報が自然と集まってくる環境に成長できる。
そして、このステップを実践するために、スモールスタートと親和性が高いFileMakerプラットフォームを選択することで、素早く効果を積み重ねることができます。これはFileMakerプラットフォームのローコード開発を活用することで、素早くシステムをカタチにすることができるからです。
おわりに
今回の記事では、内製化の苦悩からホワイトな環境で実践するステップをご紹介いたしました。
全体最適化にはFileMakerプラットフォームでもプロコードと言われている専門的なスキルが必要になります。ただし、そのスキルを習得することは簡単ではありません。
しかし、FileMakerプラットフォームと親和性が高い”小さく始めること”と”部分最適化”のステップにチャンレンジすることで非常に良い結果を生み出します。
例えば、3名で120時間/月を必要としていた業務時間を、その業務に特化したソリューションを開発したことで、0時間にすることができました。また、その効果としてエラーが発生することがない業務に変化させることに成功しています。
そして、その削減した時間をより高度な業務に振り分けることで、その業務に対して新たな改善策が生まれたということがありました。
これはシステムの導入効果だけではなく、業務改善のPDCAサイクルが自然と生み出せる環境を作り出すことができたと言えるでしょう。
その環境がスタッフの教育に繋がり、リソース不足を改善するきっかけにもなります。
このような経験が蓄積されることで、全体最適化に向けた体制やステップがより実践に即したカタチとなり、その方向性を共有することができる環境が構築できます。
そのためには費用対効果を予測し、イニシャルコストやランニングコストを超える価値を説明、もしくは提供することが関係者の理解を深めることになります。
先程の例であれば、「120時間 × 全国平均1,004円(記事執筆時) = 120,480円/ 月」が見えるコストとして削減できます。また、”高度な業務ができる”シナジー効果も発生します。
つまり、見える効果として”120,480/円の削減”。生み出した価値として ”120時間(120,480/円)の創出”となります。
まずは、小さくて良いので、始めることです。
その一歩がいつか大きな流れにつながり、コストの削減・プロジェクトの敏速化、そして人材育成へと繋がります。
あなたの一歩がその先にある未来に繋がると信じています。
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