こんにちは。リナークのニシザワです。
今回の記事では2010年当時、紙管理や伝言ゲームが主だった業務管理体制から、システム管理に移行すべく舵を切り、その結果として「内製化 × Claris FileMaker」にたどり着いた私のエピソードをご紹介します。
Microsoft Access / PHPとMySQLを用いた内製化の限界
長野県千曲市にある製造業様では、受注〜設計〜製造〜出荷〜売上(受注管理、工程・製造管理、資材管理、売上管理)までの業務をMicrosoft Accessで構築されたシステムで管理をしていました。
このMicrosoft Accessで稼働していたシステムは三十数年前から稼働していました。
当時の大量生産時代から受け継がれてきた業務と現在の受注体系=少量多品種生産に適した業務とで、システム上の差異を埋めるために、人のオペレーションで繋ぐ作業に多大な時間を使ってフォローをしていました。
また、特注品だけではなく在庫品も同一の生産工場及び製造ラインで製造をしていました。そのために日々のオペレーションは、上記で記載した業務範囲だけではなく、物流管理、在庫管理、製品管理と販売〜製造〜アフターフォローまでをコントロールしていました。
そこで私は生産管理業務に従事しながら、実業務に関係するアプリケーションをMicrosoft Access/VBAで構築していました。また、無料で開発・運用環境が構築できるPHP/MySQLを組み合わせて、自部門や関連部門との業務を効率化できるアプリケーションを開発し、運用していました。
なぜなら、入社当時は必要な情報にフレキシブルにアクセスできる環境がなく、営業・設計・現場・物流といった関係する部署の情報を取得するために、三種の神器?である「紙・電話・FAX」を利用して、情報のアップデートを実施していました。
これは情報を集めることに莫大なリソースを注ぎ、本来すべき向上のコントロール業務に時間を割くことが難し環境でした。
そのために小規模ではありましたが、ボトムアップ・アプローチで現場レベルで内製化を実現していました。
当初は順調に開発・運用をしていましたが、時間が経つにつれて問題も発生してきました。
Microsoft Access/VBAでは、ローカルレベルのアプリケーションしか開発できない。
Accessファイルをファイルサーバ等に共有して複数人で利用することも可能ですが、データベースファイルが破損するリスクがあります。ただし、蓄積した情報を閲覧したいとの希望が大きくなり、ファイルサーバーで共有をしましたが、その結果、ファイルが反したコトによる業務停止が幾度となく発生することになりました。
PHP/MySQLでは、開発に時間が必要である。
この手法では上記の問題点である複数人で共有できない点は解消ができます。ただし、生産管理業務の傍ら業務システムの開発をしているために、二足の草鞋を履くには圧倒的に開発時間が不足します。
十分な開発時間を確保することが難しく大量のコーディングが必要な言語では、改善に至るまでに莫大な時間が必要になるためです。
すでに日々のオペレーションは人間の限界を超えており、スピード感を持って改善を進めていくためには「効率良く開発ができ、かつ安易にデータを共有できる環境が構築できるプラットフォーム」がないのかという点で様々な開発ツールを探しことにしました。
その中でFileMakerプラットフォームと出逢いました。
FileMakerプラットフォームとの出逢い
そのタイミングでClaris社主催のセミナーが長野市で開催されることを知り、FileMakerプラットフォームに触れる機会ということでセミナーに参加をしました。
そのセミナーでは、実際にFileMakerに触れることもでき、かつ様々な開発事例を見ることで「今抱えている問題をFileMakerプラットフォームなら改善できるかもしれない」と思いました。
そのセミナーの帰り道に電機店に寄り、FileMakerAdvance12と市販の書籍複数冊を購入してFileMakerソリューションの開発学習をスタートしました。
元々、Microsoft AccessやPHP/MySQLで開発していたこともあり、FileMakerソリューションで簡易的なアプリケーションを開発し、運用するまでには時間はかかりませんでした。
しかし、開発効率が良いFileMakerプラットフォームであっても本格的なソリューションを構築するためには、スキルと経験が少なく時間が足りませんでした。
物流管理システムのリプレース
そのころ、物流業務並びに物流管理システムに様々な問題が発生するようになってきました。
業務の増加に伴う紙での注文残管理、配送ミス、Window7の導入に伴うシステムトラブルなど、日々の受注をコントロールしなければならない物流業務は危機的状況となっていました。
その問題を抱えたままでは経営そのものに大きな打撃を与えるだけでなく、信用問題にも発展しかねない状況となり、このタイミングで物流管理システムのアウトソーシングを検討し始めました。
そこで、インターネットやお付き合いのあったベンダーさんを通じて、幾つかのシステム開発会社に提案を依頼しました。
しかし、そこでの提案は業務にマッチしない提案、そして予算をはるかに超える金額の見積でした。
その提案書を見たときに、「このままアウトソーシングをしても絶対に良い結果にはならない」と確信し、開発を外注することを諦めました。
そして、改めてFileMakerプラットフォームの勉強と情報収集をスタートさせました。
そんなときに内製化支援というサービスされている会社を見つけることになりました。
共同開発(内製化支援)というカタチ
その内製化支援サービスを利用するために、まずはヒアリングのために物流センターの見学し、問題点と改善を把握していただきました。そして、私が開発していたソリューションを見ていただき、将来的にはFileMakerプラットフォームを用いて自社で高度なアプリケーションを開発できるような体制作りや私以外にもFileMakerプラットフォームの開発者を育てたいという希望も伝えました。
その中で「共同で開発する」という提案をいただき、システムの基盤となるデータベースの設計、標準開発ルール、ライブラリといった開発資産を共有することで、なぜこのような開発を用いているのかを実際に開発をしたいと思っていたソリューション(物流管理システム)を用いて開発することで、学習スピードは一気に上がりました。
これは開発したいと考えていたソリューションが目の前で構築されていき、動くところまでを素早く体験できるFileMakerプラットフォームならではのメリットでした。
それはFileMakerプラットフォームと親和性が高いアジャイル開発手法を採用したことで、数週間単位で実際に動くソリューションを現場と見ることで対話が生まれて完成度が高まり、三ヶ月後にはリリースするレベルに到達しました。
対話から見えていなかったことを可視化し、優先順位の変更で当初想定していなかった機能を実装しするなど、予定していなかった機能を開発をすることが短い期間の中で変化していきました。
このような変化が激しい環境下であるからこそ、アジャイル開発の良さ、そしてFileMakerプラットフォームの柔軟性が際立つことを身をもって体現しました。
また、全体的な開発ボリュームやスコープを整理しながら、変化に対応していくことで、次すべきことが必然とリスト化することができました。
これがのちに提案していくITロードマップに繋がりました。
物流管理システムの成功
三ヵ月後には予定通りのソリューションをリリースすることができました。
また、リリースしたときには解決できなかった問題もリリース後に実作業と照らし合わせながら、最善策を検討し、開発することで当初の問題点をクリアすることができました。
その成功が三十数年前に構築された基幹系システムを一新することのキッカケになりました。
まずは物流と繋がりのある製品検査管理システムを構築し、物流管理システムの入庫処理をバーコードを用いてシームレス化し、そのバーコードを用いて出庫もしくは出荷をコントロールすることで配送ミスを皆無にすること、そして在庫管理を実現することができ、棚卸にiPadを用いて簡略化することで精度が高い在庫管理や受注残処理を実現することができました。
また、紙管理に頼っていた生産管理をシステム化し、計画・工程・材料・BOM・製造のすべてをFileMakerプラットフォームで実現し、工場の今を俯瞰的に把握することを可能しました。
この生産管理システムの導入にはSaasや改めて外注を検討するためにRFP(提案依頼書)を作成し、各ベンダーさんから提案書をいただきました。
やはり、年商から考えると提案いただいた金額は予算に合わず、また予算が合うとしても希望するソリューションのレベルに達していないという内容でした。
このころには要件定義・データベース設計、開発〜運用までと一般的に言う上流工程から下流工程までひとりで対応できるレベルになり、リスクヘッジしながら内製化で開発できるような環境構築やチームの構築もしていきました。
そして、営業の受注発注管理が別プラットフォームで稼働していたシステム構成をFileMakerプラットフォームに統一することで、プラットフォーム間の非同期の連携をなくし、セキュリティの向上や作業状況の可視化を実現し、受発注後の動きがリアルタイムで把握できるようになりました。
これをキッカケに顧客〜案件〜商談〜見積〜受注〜見込み管理といった営業の商流を担うCRM(顧客管理システム)とSFA(営業支援ツール)の良いところを営業支援システムを構築し、営業プロセスモデルのツールとしてPC、iPad並びにiPhoneで利用できる環境までを構築した規模にまでシステムが成長し、基幹系システムをも凌駕する業務範囲と利用状況となりました。
さいごに
些細なキッカケが業務を改善する歯車を回し始めて、その歯車を回し続けることで業務を改善する術を身につけたことで、小さな業務改善が会社の基幹を担う規模に成長させたことは、良い経験となり糧となりました。
今、出来なくても出来るところから始める。今、分からなくても進めることで見えてくる景色がある。そして今、始めることでその先には、今よりも目線が上がった問題や解決策を見つけることができる視点を育むことができると考えています。
一気に業務が増えることで負担が増加することも安易に想像できると思います。そして、無理なことは無理と断る勇気も必要だとは思います。
しかし、少しでも改善できる場所を見つけられる「目」をお持ちであれば、それがいつしか大きな台風になり、周りを巻き込むことで大きな改善に繋がると信じています。
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