こんにちは。リナークのニシザワです。

システム開発の世界では、プロジェクトの成功はそのスタート方法によって大きく左右されます。最適な成果を引き出すためには、効果を最大化し、リスクを最小化する戦略が必要です。この戦略として注目されているのが「スモールスタート」です。

今回の記事ではスモールスタートの実施にあたって最適なプラットフォームとして、FileMakerの活用を推奨します。ただし、全てのFileMakerとスモールスタートの組み合わせが成功を保証するわけではありません。成功するためには、リスクを最小化し、効果を最大化する具体的な戦略と開発効率を上げるための手法が重要となります。

これらの必要な要素に焦点を当てつつ、開発という側面からみた効率を高める一つの手法として「リレーションシップグラフ」の設計についてご紹介します。蜘蛛の巣状のリレーションシップグラフと、弊社が採用するアンカーブイ手法によるリレーションシップグラフの違いについて詳述します。この違いがシステムパフォーマンスに直結し、基本的な要素であるにも関わらず重要性を帯びています。

スモールスタートの精度を高め、開発のパフォーマンスを向上させるためには、重要なポイントを把握し、適切な開発手法を理解・共有することが求められます。そのため、リレーションシップグラフの解説を参考にし、確固たる一歩を踏み出していただければ幸いです。

はじめに

システム開発の初期段階は、しばしばリスクが高く、それでいて成果を確認するまでには時間がかかります。しかし、もしシステム開発に手間と時間をかけすぎていると感じているなら、「スモールスタート」という考え方を採用することで、その問題を解決することができます。

「スモールスタート」とは、システム開発の初期段階で小さな範囲を対象にし、その結果をもとに次の段階へと進むというアプローチです。これにより、開発リスクを最小限に抑えつつ、効果的なシステムを構築することが可能になります。

この記事では、スモールスタートのアプローチを最大限に活用するためのパワフルなツールである「Claris FileMakerとスモールスタートの親和性」にスポットを当てます。FileMakerを使えば、手軽に始められるだけでなく、その拡張性とカスタマイズ性により、システムがビジネスの成長に合わせてスケールアップすることが可能です。

一緒にスモールスタートの戦略を用いて、リスクを最小化し、効果を最大化する方法を学びましょう。

FileMakerとスモールスタート

次にツールであるFileMakerについて詳しく見ていきましょう。FileMakerは、その特性からスモールスタートに最適なプラットフォームと言えます。

FileMakerは、ドラッグ&ドロップで簡単にデータベースを設計でき、またフレキシブルに機能追加や改修ができるという特性があります。これにより、システム開発の初期段階で小さな範囲を対象にし、そこから段階的に機能を追加・拡張していくという、スモールスタートに必要な柔軟性を提供します。

また、クラウドサービス(FileMaker Server / FileMaker Cloud)としても提供されており、インフラの準備や運用にかかるコストと時間を抑えつつ、いつでもどこでもシステムにアクセスできるという利便性を提供します。

これらの特性からFileMakerはスモールスタートにおける強力なパートナーとなります。次のセクションでは、具体的な戦略とともに、これらの特性がどのようにスモールスタートに貢献し、リスクを最小化し、効果を最大化するのかを詳しく見ていきます。

リスク最小化の戦略

システム開発のリスクは大きく分けて2つあります。一つは、開発が失敗に終わり、無駄な時間と資源を消費してしまうこと。もう一つは、開発したシステムが期待する効果を得られないことです。これらのリスクを最小化するための戦略とFileMakerがその実現にどのように貢献するかを見ていきましょう。

プロトタイピングによる確認

FileMakerを用いることで、短時間でプロトタイプを作成し、それにより開発方針の妥当性を早期に確認することができます。これにより、開発失敗による時間と資源の無駄を防ぐことができます。

段階的な導入

FileMakerのフレキシブルなカスタマイズ性を活用して、一度に全ての機能を開発・導入するのではなく、小さな範囲から始めて段階的に拡張していくことが可能です。これにより、一度に大きな投資をするリスクを避けつつ、効果を確認しながら進めることができます。

ユーザー参加型の開発

FileMakerは直感的な操作性を持っているため、開発者だけでなく、実際のユーザーもシステムの開発に参加しやすいです。これにより、開発したシステムがユーザーの期待に沿ったものになりやすく、またユーザーがシステムを適切に使いこなせる可能性が高まります。

これらの戦略を用いることで、システム開発のリスクを最小化することが可能になります。次のセクションでは、同様に効果を最大化するための戦略を見ていきます。

効果最大化の戦略

システム開発の目的は、業務の効率化や新たな価値の創出など、様々な効果を得ることです。しかし、その効果を最大化するためには、ただシステムを開発するだけでは不十分です。適切な戦略とそれを支えるツールが必要です。次にFileMakerが効果最大化にどのように貢献するかを見ていきましょう。

データ駆動型の開発

FileMakerは強力なデータ管理・分析機能を持っており、それによりデータ駆動型の開発が可能です。これにより、システムの改善方向が客観的なデータに基づいて決定され、より高い効果を得ることが可能となります。

カスタマイズ性

FileMakerは高いカスタマイズ性を持っており、ビジネスのニーズに応じてシステムを柔軟に改修・拡張することができます。これにより、ビジネスが成長し、ニーズが変化してもシステムがそれに追随でき、効果の持続性を保つことが可能となります。

ユーザーフレンドリーな設計

FileMakerはユーザーフレンドリーな設計を持っており、それによりユーザーがシステムを適切に利用することが容易になります。これにより、システムが十分に活用され、期待する効果を発揮する可能性が高まります。

これらの戦略を用いることで、システム開発の効果を最大化することが可能です。FileMakerを活用して、スモールスタートから大成果へと導く方法を掴みましょう。

リソース管理と開発効率の改善

FileMakerとスモールスタートの親和性を述べてきましたが、その特性を理解せずにスタートしてしまうとFileMakerとスモールスタートのメリットを満遍なく享受することが難しくなります。

それはスモールスタートであってもその先導役にはマンパワーが必要です。これは日常の業務に加えて、プロジェクトの業務が増えます。そのために日常業務の簡素化、プロジェクト業務のスピードアップが求められます。

プロジェクト業務の中でもシステム開発にかかるリソースは非常に重要です。その重要な部分を担うプラットフォームとして、FileMakerは開発スピードを一段とアップさせる可能性を秘めています。

ただし、正しい開発手法を理解していなければ宝の持ち腐れとなることでしょう。これは私が経験してきた内製化に共通する点であり、基本的なことであるリレーションシップグラフを改善することで開発効率をアップさせることが可能です。そして、実現したいシステムをよりスピーディーに表現でき、かつその効果を素早く実感することができます。

また、担当者レベルで開発されたシステムは、業務を理解しているスタッフが開発されているために業務との親和性が高く、ユーザーさんによっては非常に使い勝手が良いことが多くあります。しかし、一つの業務だけを見たときに効率的になっていたとしても、業務やシステムを俯瞰してみたときに、その周辺業務をシステム化することで、より効率的にシナジー効果を得られることがあります。そのためには、スモールスタートをしつつもITロードマップを作成し、将来目指すべきゴールを明確にして、ステークホルダーと共有してベクトルを合わせることが重要です。

ただし、スモールスタート時点では周囲のスタッフやステークホルダーに業務改革やシステム化を理解していただくことが難しい局面があると思います。また、ITロードマップを作成するマンパワーも必要となるために、作成することが難しい局面もあります。しかし、少なくともそのプロジェクトの目指すゴールを簡単でも良いので作成しておくことがあなたのの羅針盤となります。

アンカーブイ手法とリレーションシップグラフの改善

FileMakerのリレーションシップグラフは、データ間の関係性を視覚的に表現することで、データ管理や操作の複雑さを大幅に軽減します。しかし、大規模なデータベースや複雑なリレーションシップを持つシステムでは、リレーションシップグラフが蜘蛛の巣のように複雑化し、理解や管理が困難になることがあります。

そこで注目すべきがアンカーブイ手法です。これは、一つの”アンカー”(基点となるテーブル)から直接リンクされる複数の”ブイ”(関連するテーブル)という構造を採用することで、リレーションシップグラフの整理と最適化を図る方法です。

アンカーブイ手法を採用することで得られるメリットは以下の通りです。

理解しやすい

アンカーブイ手法はリレーションシップグラフを一目で理解しやすくします。各テーブル間の関係性が明確で、データの流れを容易に追跡できます。

管理が容易

アンカーブイ手法はテーブル間の関係性を明確にすることで、新たなテーブルの追加や既存のテーブルの修正を容易にします。

パフォーマンス向上

アンカーブイ手法は必要なリレーションシップだけを定義することで、データベースのパフォーマンスを向上させます。

以下は、弊社の開発ルールを採用したリレーションシップグラフになります。

FileMakerを使ったシステム開発において、このようなテクニックを駆使することで、スモールスタートから大成果を創出する道筋がさらに明確になります。

さいごに

この記事を通して、FileMakerを活用したシステム開発の戦略についてお伝えしました。リスクを最小化しつつ、効果を最大化するためのスモールスタートというアプローチが、どのように具体的に行われ、そしてそれがどのように結果をもたらすのかを見てきました。

FileMakerはその強力な機能と高い柔軟性により、開発プロジェクトの初期段階から成果を出すことを可能にします。プロトタイピングによる早期確認、段階的な導入、データ駆動型の開発、高いカスタマイズ性、そしてユーザーフレンドリーな設計。これらすべてが組み合わさって、小さなスタートから大きな成果を創出します。

しかし、この記事で述べた戦略はあくまで一例です。FileMakerはその可能性がほぼ無限であり、あなた自身のビジネスやプロジェクトに最適な戦略は、あなた自身が最もよく知っています。それを見つけて適用し、最大限の効果を得るためにFileMakerの持つ強力な機能を最大限に活用してみてください。

今回の記事が、あなたのFileMakerを活用したシステム開発の一助となれば幸いです。


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