こんにちは。リナークのニシザワです。
製造業に限らず在庫を持って販売や製造をしている場合、少なからず在庫管理を行っていると思います。その管理手段は紙管理やExcel管理、もしくはAccessやパッケージのソフトウェアであったりと様々な方法で実現されていると思います。
今回の記事では在庫管理システムの設計にチャレンジします。そして、今回のER図はシンプルな表現で作成していますので、在庫管理をシステム化するときのサンプルとしてご活用いただければ幸いです。
※設計は在庫管理のレベル(要求)によって、その設計のレベルも変化します。また、材料在庫の在庫管理なのか。商品(製品)在庫の管理なのか。によって、付随する情報管理は異なってきます。そのために主たる在庫管理システムを簡略的に表現しています。また、その設計はER図を用いて主要な項目のみを記述します。
はじめに
現代の製造業、および商品管理が必須の業界において、在庫管理は事業成功の一端を担っています。適切な在庫管理が行えると、在庫不足や過剰在庫による損失を避け、効率的な生産・出荷プロセスを実現できます。しかし、複数の製品や部品を取り扱う製造業では、在庫管理が複雑になり、一手間も二手間もかかることがあります。特に製品の種類が多い、または製品の生産・販売が季節性を持つ場合、在庫管理は一段と難易度が高まります。
そのような中、私たちが提案するのがFileMakerを用いた在庫管理システムです。FileMakerは多機能なデータベース管理システムであり、在庫管理における多くの課題を解決する能力を有しています。複雑な在庫管理をシンプルにし、一元化されたインターフェースから在庫を効率的に管理できます。今回の記事が在庫管理の課題を解決し、業績向上を目指す皆さまに、本記事が一助となれば幸いです。
ER図とは
ER図(エンティティ-リレーションシップ図)は、データベースの構造を視覚的に表現したものです。エンティティ(実体)は、データベース内で管理するべき情報の塊、つまり「商品」や「在庫」、「発注」、「取引先」などのような概念や物を指し、リレーションシップ(関連性)はそれらエンティティ間の関連を示します。(エンティティはテーブルと表現した方がFileMakerでは理解しやすいです)
例えば「商品」と「在庫」の間には「商品は一つまたは複数の在庫を持つことができ、在庫は一つの商品に関連している」というリレーションシップがあるとします。また、「商品」と「発注」の間には「商品は一つまたは複数の発注を持つことができ、発注は一つの商品に関連している」というリレーションシップがあるとします。
このように、ER図は、データベースの中にどのような情報が存在し、それらの情報がどのように関連しているかを簡明に表示します。そして、それぞれのエンティティは、一連のフィールド(属性)を持つことでより具体的な情報を持つことができます。例えば、「商品」エンティティは「商品ID」、「商品名」、「商品説明」、「価格」、「取引先ID」などのフィールドを持つことができます。
在庫管理システムの要件
在庫管理システムを設計する前に、システムが満たすべき要件を理解することが重要です。
以下に、一般的な在庫管理システムが備えるべき主な要件を挙げています。
在庫のリアルタイム追跡
在庫管理システムは、在庫の増減をリアルタイムで追跡できる必要があります。これにより、在庫不足や過剰在庫を適時に把握し、必要な対策を講じることができます。
商品情報の管理
商品の詳細情報(名称、サイズ、重量など)や、商品に関連する情報(製造日、賞味期限、ロット番号など)を一元的に管理できるシステムが求められます。
発注管理
在庫が一定のレベルを下回ったときに自動的に発注を行う機能や、発注状況を管理する機能が必要です。
在庫予測
過去の販売データや季節性などを考慮して、将来の在庫需要を予測する機能があると、発注計画をより効率的に立てることができます。
レポート作成
在庫状況、発注状況、在庫の動きなどを視覚的に表示するレポートやダッシュボード機能が求められます。
インテグレーション
他のシステム(例えば、販売管理システムや会計システム)との連携が可能なシステムが望ましいです。
これらの要件は、FileMakerを使用して設計する在庫管理システムにも当てはまります。
次のセクションでは、これらの要件を満たす具体的な設計について説明します。
在庫管理システムの設計
在庫管理システムの設計は、そのシステムが要求される機能と要件によって大きく変わることがあります。ここでは、前述した要件を満たすための一般的な設計アプローチを説明します。
データベース設計
在庫管理システムの設計の中心には、商品、在庫、発注、取引先などの情報を管理するデータベースがあります。商品テーブル、在庫テーブル、発注テーブルなど、必要なテーブルとそれらのテーブル間の関係を設計します。この際、ER図を使って設計を視覚化すると理解しやすくなります。
ユーザーインターフェース設計
ユーザーがシステムを直感的に使えるように、使いやすいインターフェースの設計が求められます。商品情報の登録、在庫の追跡、発注などのユーザーが必要とする機能ごとのレイアウトを設計します。
機能設計
在庫追跡、自動発注、在庫予測などの機能をどのように実装するかを設計します。例えば、自動発注機能を設計する際には、どのタイミングで発注を行うか(例:在庫が一定数以下になった時)、どのように発注するか(例:最も安価な取引先に自動的に発注する)などを決定します。
レポートとダッシュボード設計
在庫状況や発注状況を視覚化するためのレポートやダッシュボードの設計も重要です。どの情報をどのような形式で表示するかを設計し、ユーザーが必要な情報を簡単に取得できるようにします。
これらの設計を通じて、在庫管理システムは具体的な形をとります。次のセクションでは、これらの設計を具体化するためのER図の作成方法について説明します。
在庫管理の設計(ER図)について
セクション1:シンプルな在庫管理
このセクションでは商品における在庫数を移動履歴から算出し、商品のマスタに保存できるようにしています。その移動履歴では移動種別を利用して、入庫、もしくは出庫を判別します。
このER図はシンプルな在庫管理を想定しています。紙やExcelの在庫管理から簡易的な在庫管理システムを利用できるようにするためのファーストステップになっています。
そのために発注管理と連動する入出庫が実現できるような業務プロセスには対応することができません。
しかし、紙やExcelではその情報を複数の人と共有することは困難を極めます。まずは簡易的にも商品情報を共有することができることを目的とするのであれば、この設計レベルで対応ができます。
このER図を基にして、「シンプルな在庫管理」システムを実現するFileMakerデモファイルを作成しました。
このデモファイルはダウンロード可能で、FileMakerプラットフォームでの学習に最適です。ぜひ活用して、効率的な在庫管理の実現を体験してください!
セクション2:発注情報から入庫管理ができる在庫管理
このセクションでは発注をデータ化して、その情報から入庫データとして活かせる設計にしています。
発注データを利活用することで入庫データの二重入力を防げることや発注に紐付く入庫管理をコントロールできます。その結果、ヒューマンエラーの発生を削減します。それに伴い、発注を登録するレイアウトや発注履歴から入庫をコントロールできるレイアウトが必要になります。情報の集約化を進めるためには必要なレイアウトになります。
ただし、この設計ではロケーション管理ができないために複数拠点の在庫管理ができません。また、商品と取引先の関係が1対1になっているため、複数購買に対応することができません。
セクション3:ロケーションと複数購買に対応できる在庫管理
このセクションではロケーションを用いることで、複数の拠点で在庫を管理することができます。そして、商品に対して複数の取引先を紐付けることができる中間テーブル(商品_取引先)を用いることで、同一商品の複数購買管理ができるようになります。取引上の条件や規制をシステムに落とし込むことができるために、購買管理コントロールの足がかりになります。
この規模になってくるとマスタ系やトランザクション系のテーブルに関係するレイアウトの数が多くなります。多くなることで、様々なデータを集約化し、一元管理できる土台が完成していくことでしょう。
しかし、例えば棚番や期限管理といった空間軸や時間軸といった管理、もしくはそのトレーサビリティまで必要になった場合にはこのエンティティだけでは不足します。また、棚卸を必要とする場合は棚卸を実施するタイミングの理論在庫と実際に棚卸をした実在庫を保持できるエンティティも必要です。
このように必要な情報や管理したい情報によってER図は異なってきます。商品は在庫を持ち、取引は商品に基づいて行われます。ER図はこのような関連性を明確に描き出し、システム設計者や開発者が理解しやすくする役割を果たします。
また、ER図はシステムの一貫性と整合性を確保するためにも重要です。一貫性は、同じデータがシステム全体で一致していることを保証します。例えば、ある商品の在庫数がシステムの複数の箇所で同じであることなどがこれに該当します。整合性は、異なるデータ間の関連性が正しく保たれていることを意味します。そして、商品が売れたときに在庫数が適切に減少することなどがこれに該当します。
これらを適切に設計し、保つことで在庫管理システムは信頼性のある情報を提供し、ビジネスの意思決定を助けることができます。
そのために、ER図はシステム開発を行う上で非常に重要な役割を果たします。
FileMakerを用いた在庫管理システムのメリット
カスタマイズ
FileMakerは、独自の業務プロセスや要件に合わせてカスタマイズが可能です。つまり、必要とする特定の情報や機能を持つ在庫管理システムを作り出すことができます。これは、一般的な在庫管理システムでは対応できないニーズに対応することができます。
簡単な操作性
FileMakerは使いやすさを重視した設計がされています。操作画面は直感的で、特別な技術的知識がなくても容易に使いこなすことができます。これにより、スタッフが新しいシステムに馴染む時間を大幅に短縮することができます。
スケーラビリティ
会社が成長し、在庫管理がより複雑になってもFileMakerはそれに対応できます。システムをスケールアップ(拡大)することが容易で、新たな機能の追加やデータ量の増加に柔軟に対応できます。
データ可視化
FileMakerには、データを視覚的に表現する強力なツールが含まれています。これにより、在庫の状況や流動性などの重要な情報を一目で理解することができます。
モバイル対応
FileMakerはモバイルデバイスでの使用も考慮して設計されています。スタッフは倉庫内や外出先で在庫データを確認したり、在庫状況を更新したりすることができます。
このようにFileMakerを用いた在庫管理システムは、そのカスタマイズ性、使いやすさ、スケーラビリティ、データ可視化、そしてモバイル対応といったメリットから、様々な業務のニーズに対応する強力なツールとなります。
また、在庫管理の効率化や業務のスムーズな進行に大いに貢献します。つまり、FileMakerを用いた在庫管理システムを導入することで、ビジネスの成長と成功につながる可能性があります。その業務がどのような課題を抱えているのか、またはどのような目標を持っているのかによって、このメリットの中から特に重要なものが変わるかもしれません。ですが、どんな業務でも、このシステムはその成功に大きく貢献することでしょう。
そのためには必要とするシステムに対して、適切なER図から最適なシステム開発を進めていくことが在庫管理システム開発の近道になります。
さいごに
私たちの生活は日々複雑になっており、それはビジネスにおいても同様です。特に在庫管理は商品の流通を正確に把握するために欠かせない業務であり、効率的な在庫管理はビジネスの成功に直結します。しかし、その重要性にも関わらず、従来の方法では人間の手に負えないほどの商品数やデータ量、その複雑性に頭を悩ませている方も少なくないでしょう。
そこで注目したいのが、FileMakerを用いた在庫管理システムです。導入が容易でありながら、業務に合わせてカスタマイズできる柔軟性、リアルタイムの在庫情報の提供、そして使いやすさを兼ね備えています。これらは在庫管理を円滑にし、業務効率を大きく向上させる可能性を秘めています。
また、FileMakerは使いやすいだけでなく、高度なセキュリティ機能を持っているため、大切なデータを守ることができます。さらには他のシステムと連携してデータを一元管理することも可能です。これにより、業務全体の見通しを良くし、適切な意思決定をサポートします。
これらはすべての課題を解決し、さらなる成長を促す力となります。そのために、どのような在庫管理システムが最適なのか、また、そのシステムをどのように設計すればよいのかを考えることが重要です。
最後にFileMakerを用いた在庫管理システムは、製造業だけでなく、様々な業界でそのメリットを享受できる有用なツールです。ビジネスで抱える課題や目標を解決・達成するための一つの強力な手段となるでしょう。その魅力をぜひ体感してみてください。
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