こんにちは。リナークのニシザワです。
今回の記事では、Microsoft AccessやPHP・MySQLを用いた生産管理システムからClaris FileMakerへ開発プラットフォームを移行する決断を下した5つの理由を紹介します。そして、Claris FileMakerで業務効率をどのように向上させることができるのかを探ります。
はじめに
Microsoft AccessはOffice製品の一部であり、WindowsやOfficeを利用しているユーザーにとって非常に馴染みがあるために初心者にも扱いやすく、Officeアプリケーションとの連携もスムーズです。これは、私がシステム開発をMicrosoft Accessからスタートした理由でもあります。しかし、システム規模やユーザー数に比例してデータ量が増加していくと、極端にパフォーマンスが低下し、レスポンスが遅くなったことで、私が開発してきた業務領域ではMicrosoft Accessを開発プラットフォームとして運用していくことの限界が見えました。
また、システム範囲が広域になると、ユーザーインターフェース開発であるMicrosoft Access・PHPとデータベース開発のMySQLを採用した開発プラットフォームでは、学習コストが増加し、開発時間の確保と開発スピードの維持が困難になりました。
そこで、開発スピードの向上やシステムのスケーラビリティを検討した結果、開発プラットフォームとしてClaris FileMakerを採用し、一気通貫で業務システムを開発することにしました。この記事では、プラットフォームをMicrosoft AccessからClaris FileMakerに移行した5つの理由を解説いたします。
理由1:システムの拡張性
Microsoft Accessの制約
Access の仕様からも分かるように、小規模なデータベースやアプリケーション開発には適していますが、拡張性に制約があります。例えば、データベースサイズ制限(最大2GB)やパフォーマンス低下、同時接続ユーザー数の制限(約255人)が挙げられます。また、システム規模が大きくなると、スケーラビリティやクラウド対応の制約、セキュリティ面での問題が顕著になります。
これはスモールスタートでシステムを作る際にはメリットとも言えます。しかし、そのシステムが拡張していくことで、この制約が重石になってしまいました。
また、一部のユーザーにとってはパソコンの利用が難しい環境がありました。しかし、スマートフォンやタブレットを用いることで、その利便性を享受できる業務があり、データベースをMySQLに移行し、PHPで開発をしました。しかし、他のデータベースへの移行にはコストと時間がかかり、予期せぬ問題が発生することもありました。
Microsoft Accessは一定のニーズには適していますが、システムの拡張性が求められる状況では、不向きであると考えます。また、現代ではユーザーのシステム利用環境が多様化(タブレット・スマートフォン等)していることから、Microsoft Accessだけではこのニーズを満たせなくなってきていました。
Claris FileMakerでのシステム拡張性の利点
Claris FileMakerの仕様からも分かるように、拡張性に優れた開発プラットフォームです。まず、Claris FileMakerはデータベースサイズ制限がほぼない(最大8TB)ため、システム規模が大きくなってもデータベースの管理が容易です。また、Claris FileMaker Serverを用いることで、安定しシステム環境で接続ユーザー数を増やすことが可能であり、柔軟なスケーリングが実現できます。
さらに、クラウド対応が容易であり、FileMaker Cloud、もしくはFileMaker Serverを利用することで、システムを安全かつ効率的に運用することができます。セキュリティ面でも、SSL/TLS暗号化に対応しており、データの保護が強化されています。また、マルチプラットフォーム対応であり、Windows、macOS、iOS、Androidなど、様々なデバイスでシステムを利用できます。これにより、ユーザーがパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットを用いて業務を行うことが可能になり、作業効率の向上が期待できます。さらに、FileMaker GoやFileMaker WebDirectを活用することで、ネイティブアプリやウェブアプリとしてシステムを展開でき、ユーザーの利用環境に柔軟に対応できます。
加えて、豊富に展開されているSaaSの利活用(API)や外部データソースへの接続機能(ESS)を持っており、他のシステムやアプリケーションとの連携が容易です。これにより、システムの機能拡張やデータ連携がスムーズに行えるため、ビジネスの成長に合わせてシステムを柔軟に拡張できます。
つまり、Claris FileMakerはスモールスタートで開発したシステムでも、基幹系システムの規模でもシステムの拡張性に優れており、現代の多様なデバイス環境やビジネスニーズに対応できる開発プラットフォームです。
システムの規模が大きくなく、ユーザーが少ないような業務に関しては、Microsoft Accessも1つの選択枠ではあると考えます。しかし、現場・営業活動、そしてその活動を管轄するバックオフィス業務を一気通貫で一元化することで業務全体、もしくは組織全体を効率化できるシステムを開発してきました。そのためには、拡張性は非常に重要であり、広範囲にユーザーが関係していることで、システムの利用価値向上、コスト低減にも繋がっていくと考えています。
理由2:パフォーマンスの向上
Microsoft Accessでのパフォーマンスの問題
Microsoft Accessのパフォーマンス問題には、いくつかの要因があります。まず、データベースサイズ制限が最大2GBまでとなっており、大量のデータを扱うシステムではパフォーマンスが低下します。また、ネットワーク上でデータベースを共有する際、Microsoft Accessのパフォーマンスは他のデータベースシステムに比べて劣ることがあります。これは、ローカルファイルベースのデータベースであるため、ネットワーク上でのデータやり取りが効率が悪くなる原因です。
さらに、同時接続ユーザー数が約255人までと制限されております。しかし、数人程度でもパフォーマンスの低下や接続拒否が発生します。複雑なクエリやレポート処理では、パフォーマンスが低下しやすく、特に大量のデータや多くのテーブルを結合するクエリの処理速度が遅くなり、パフォーマンスが著しく劣ることが顕著に現れます。
そのため、単一ユーザー向けに設計されていることが多く、その設計基準の状態でマルチユーザー環境に展開するとパフォーマンスが著しく劣ります。複数のユーザーが同時にデータベースにアクセスすると、競合やロックの問題も発生しやすくなります。これらのパフォーマンス問題から、システム規模が大きくなると不向きとなることがあります。
しかし、このような問題をデータベースをSQL ServerやMySQLなどに変更することで、Accessの一部リスクを低減することは可能です。
Claris FileMakerでのパフォーマンス向上
Claris FileMakerは、拡張性やスケーラビリティ、モバイル対応、セキュリティ面での強化が特徴で、効率的で柔軟なシステム構築が可能です。継続的なアップデートにより、最新技術の取り入れが容易で、競争力のあるシステムを維持・拡張できます。
また、活発な開発者コミュニティ(Claris コミュニティ)がサポートや情報共有を充実させ、トラブルシューティングや機能拡張が効率的に行えます。現代のビジネス環境で求められる拡張性やパフォーマンスに対応したプラットフォームとして、Claris FileMakerは適した選択です。
さらにクラウド対応が強化されており、これによりリモートでのアクセスやデータ管理が容易になります。ユーザーはタブレットやスマートフォンなど、さまざまなデバイスからシステムにアクセスできるため、働き方の多様化にも対応できます。
このように拡張性、スケーラビリティ、モバイル対応、セキュリティ面での強化、開発効率の向上といった特長を備えたClaris FileMakerは、Microsoft Accessよりもパフォーマンス向上が期待できる開発プラットフォームです。現代のビジネス環境で求められるニーズに適したシステム構築や維持ができるため、企業や開発者にとって有益な選択となります。
ただし、一部ではClaris FileMakerのパフォーマンスは「遅い」ということが見受けられます。確かにClaris FileMakerのお作法や特徴を理解せずに開発すると、このような結果になることがあります。
その結果、ユーザー数やデータが多くなることでパフォーマンスが低下し、利用に耐えがたいシステムとなってしまうことがあります。
しかし、これは開発スキルと直結する問題であり、このようなことを発生させないようにする技術的特性があります。それはシステム検討段階から拡張性を考慮した設計・開発をすることで、クラウド運用であったとしても抜群のパフォーマンスを提供できます。これは、Claris FileMakerの技術的特性を考慮したデータベース設計が大切です。
理由3:ユーザビリティの改善
Microsoft Accessでのユーザビリティの課題
Microsoft Accessは、簡単なデータベースやアプリケーションの作成には適していますが、ユーザビリティの面でいくつかの課題があります。まず、デザインの自由度が低く、ユーザーフレンドリーなインターフェースを作成することが難しいです。これは、データベースのユーザーにとってわかりやすい画面を提供できない場合があるため、使い勝手が悪くなる原因となります。
また、モバイル対応が限定的であり、スマートフォンやタブレットでの利用が困難です。現代では、多様なデバイスからアクセスできることが一般的ですが、Microsoft Accessで作成したシステムは主にパソコンでの利用が前提となっています。そのため、モバイルデバイスでの利用が求められる場合には、対応が難しいという課題があります。
Claris FileMakerでのユーザビリティの改善
Claris FileMakerは、ユーザビリティの改善に力を入れている開発プラットフォームです。まず、デザインの自由度が高く、ポップオーバー、カードウインドウ、Webビューワ等と言ったユーザーフレンドリーなインターフェースを作成することが容易です。これにより、ユーザーにとってわかりやすく使いやすい画面を提供でき、ユーザビリティが向上します。
また、モバイル対応が充実しており、スマートフォンやタブレットでの利用が可能です。さらに、FileMaker Goという専用のアプリを使えば、iOSデバイスでの操作が簡単になり、ユーザビリティがさらに向上します。
例えば、パソコンの利用が難しい環境でiPadのようなタブレットでシステムが利用できます。そして、作業者の情報がリアルタイムに反映されて現状を素早く把握することが可能になったり、移動中に自社のパフォーマンス(計数管理)をグラフィカルに確認したりすることができます。また、今まで会議のために作成していた資料を廃止し、ユーザービリティが高いシステムで自動的に集計したグラフィカルなグラフや数字をリアルタイムに利用することで、より有意義な会議にすることができます。
理由4:セキュリティとサポートの向上
Microsoft Accessのセキュリティとサポートの問題点
Microsoft Accessはセキュリティ機能が限定的で、データの暗号化やアクセス権限の設定が煩雑である場合があります。これにより、個人情報や機密情報を扱うシステムにはデータ漏洩のリスクが高まる可能性があります。
また、ネイティブでのクラウド対応が限定的であるため、クラウド環境でのセキュリティ対策が難しいことが問題点となります。現代ではクラウドを活用したリモートワークや業務効率化が一般的ですが、クラウド環境でのセキュリティが十分に保護されないことが懸念されます。
さらにサポート体制も限定的です。特に古いバージョンでは、サポートが終了していることが多く、問題が発生した際に対応が遅れることがあります。これにより、システムがダウンした場合やセキュリティ上の問題が発生した際に、迅速な対応が難しくなることがあります。
Claris FileMakerでのセキュリティとサポートの改善
Claris FileMakerは、セキュリティとサポートの面で大幅に改善されています。データベースファイルや通信の暗号化が強化され、AES 256ビット暗号化がサポートされており、データ保護が強固になっています。また、ユーザーごとのアクセス権限や役割ベースのアクセス制御が容易に実現でき、適切な権限管理が可能です。
そして、クラウド対応が強化されており、FileMaker Cloud、もしくはFileMaker Serverを利用することで、クラウド環境でのセキュリティ対策が容易になります。定期的にセキュリティアップデートが提供され、新たな脆弱性に迅速に対応できるため、システムのセキュリティは継続的にサポートされ、保つことができます。
セキュリティはシステムを利用する上で非常に重要な要素となっています。これは昨今、サイバー攻撃や情報漏洩の対策、そして不祥事などが明るみになっています。例えば日本ネットワークセキュリティ協会の資料では、情報漏洩によって被害額が4億円近い金額となった事案も発生しています。
セキュリティはシステム運用の根幹を揺るがしかねない問題に発展する可能性があり、昨今のシステム運用面では優先度が高く、開発段階から考慮すべき必要があります。
理由5:学習の効率化とコスト削減
Microsoft Accessでの効率化とコスト面の課題
Microsoft Accessは手軽にデータベースアプリケーションを作成できる利点がありますが、効率化とコスト面に課題が存在します。システム規模が大きくなると、開発やメンテナンスの効率が低下し、学習コストや開発コストが増大します。
そして、機能制限や拡張性の問題からデータベースをMySQLやSQLServerに変更することが求められ、そのためのデータベース言語を学習する必要があります。また、開発や移行にかかるコストが発生します。
しかし、書籍やホームページなどで学習できるリソースは多くあるために、開発プラットフォームとして学習の環境を整えることを考えると敷居が低いのではないでしょうか。
Claris FileMakerでの効率化とコスト削減の実現
Claris FileMakerでは、直感的なユーザインターフェースと豊富な機能が提供されており、開発者が短期間でアプリケーションを構築できます。
一般的なプログラムと言われている言語はスクリプトを使用しており、標準的なプログラミング技術が適用できるため、学習コストが低く抑えられます。また、ドラッグアンドドロップで操作できるデザイン環境も開発の効率化に寄与します。そして、学習リソースは豊富にあり、公式のチュートリアルやユーザーガイド、オンラインコミュニティから得られる情報など、多くの情報源が利用可能です。また、有料のトレーニングコースやセミナーも存在します。
コスト削減面ではシステム規模の拡張にも柔軟に対応できるため、将来的な移行コストが抑制されます。さらにクラウドやモバイルデバイス対応が容易であり、インフラコストも削減できます。
パフォーマンスの面でも高速な処理能力を持っており、大規模なデータベースでも効率的に動作します。これにより、システム運用コストも低減される可能性があります。
総合的に見ると学習の効率化とコスト削減を実現し、開発者にとって優れた開発プラットフォームであると言えます。特にシステム規模が拡張することが予想される場合や異なるデバイスでの利用が求められる状況では、Claris FileMakerの採用が有益となるでしょう。
さいごに
Microsoft AccessからClaris FileMakerへの移行が業務改善のカギとなることをお伝えしました。今回ご紹介した5つの理由は、私の経験をもとにしたClaris FileMakerの具体的なメリットです。
パフォーマンスの向上
大量のデータや多数のユーザーにも対応できるため、スムーズな業務運営が可能になります。
ユーザビリティの改善
使いやすいデザインや多機能を持ち、モバイル対応も容易で、さまざまなデバイスでの利用が可能です。
セキュリティとサポートの向上
高度なセキュリティ機能を備えており、充実したサポートも受けられます。
学習の効率化とコスト削減
比較的短い学習期間でスタートでき、基幹系システムを開発するポテンシャルがあるため、リソースの有効活用が可能です。
柔軟な拡張性
スケーラブルであり、システムの成長に合わせて簡単にカスタマイズや拡張が行えます。
Microsoft AccessからClaris FileMakerへの移行には、システム拡張性の向上、パフォーマンスの最適化、ユーザビリティの改善、セキュリティとサポートの強化、学習の効率化とコスト削減が挙げられます。これらの要素は、現代のビジネス環境で求められるシステム開発のニーズに応える上で重要です。
そして、Claris FileMakerを活用することで効率的な業務運営が実現できるでしょう。
今回の記事で述べた点が皆さんの環境改善に役立つことを願っています。ぜひ、効率的な業務運営を実現しましょう!
この記事にご興味を持たれた方は、こちらの記事もおすすめです。