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生産管理システムの導入事例。作業実績の入力から始めて月900時間を減らした電子機器メーカー

長野県の電気・電子機器メーカーで、紙とExcelに分かれていた作業実績と工程の情報をFileMakerで一つにつなぎ、作業時間を月900時間減らした事例です。作業実績の入力から小さく始め、紙の製番票は残した理由も紹介します。

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こんにちは。リナークのニシザワです。

この記事では、長野県の電気・電子機器メーカー(従業員100〜300名)で、生産管理の仕組みを育ててきた事例を紹介します。

この仕組みは、私が前職の社員として社内で立ち上げたものです。退職後はリナークが外部のパートナーとして、開発と保守を続けています。社内でつくった仕組みを、外から支えながら育て続けている事例でもあります。

導入前の課題

この会社では、三十数年前に構築された基幹システムが動いていました。大量生産の時代につくられた仕組みと、今の少量多品種の受注とのずれを、人の手で埋めている状態でした。特注品と在庫品を同じ工場・同じラインでつくっているため、生産だけでなく物流や在庫の管理も複雑です。

必要な情報にすぐたどり着ける環境がなく、営業・設計・現場・物流の情報を集めるのに、紙・電話・FAXを使っていました。作業実績や工程の情報も、紙の帳票とExcelに分かれていました。そのため、次のような仕事に多くの時間がかかっていました。

  • 紙・Excelへの転記:現場が書いた作業日報や実績を、事務所で別の台帳やシステムに入力し直していた
  • 現場を回っての確認:工程がどこまで進んでいるかは、担当者が現場を回って確かめていた
  • 問い合わせへの対応:営業や他部署からの「今どこまで進んでいる?」「いつできる?」に、電話や口頭で答えていた

工程の遅れも、口頭で共有されていました。

なぜ内製を選んだか

生産管理のシステム化にあたっては、パッケージ(SaaS)や外部への開発委託も検討しました。提案依頼書(RFP)をつくり、複数の会社から提案を受けています。

しかし、会社の規模に対して金額が予算に合わないか、予算に合っても求める業務の水準に届かないか、のどちらかでした。そこで、物流の仕組みづくりで経験を積んでいたこともあり、社内で開発する道を選びました。経緯は「苦悩と限界から導き出した「内製化 × FileMaker」という方程式。」で詳しく書いています。

進め方:作業実績の入力から始めた

最初から生産管理のすべてをシステムにしたわけではありません。最初に仕組みにしたのは、作業実績の入力です。

現場で実績が入力されれば、それを転記する必要がなくなり、工程の進み具合もそこから分かるようになります。いちばん多くの手間が生まれていた場所から始めることで、効果を早く確かめられました。

そのうえで、受注・製番・工程・実績を一つの記録でつなぎ、次の3つの画面を整えました。

  • 現場の実績入力:iPad や iPhone から、その場で入力できる画面
  • 工程のカンバン:現場の大型モニターに映し、どの製番がどの工程にあるかを一目で分かるようにした
  • 管理側の一覧:遅れや進み具合を、事務所から追える一覧

製造業の生産管理システムのカンバン画面。工程ごとに受注カードが並ぶ

その後、対象を計画・工程・材料・BOM(部品表)・製造へと広げ、工場の「今」を全体で見渡せるようにしました。

道具は Claris FileMaker で、現場の端末は iPad・iPhone(FileMaker Go)、製番の読み取りにはバーコードを使っています。

つまずき:紙をやめたら現場が困った

使い始めてすぐに、つまずきがありました。紙をすべてなくそうとしたところ、現場が困ってしまったのです。

製品と一緒に工程を流れていく作業指示書(製番票)は、現場にとって「今、手元にある仕事が何か」を示す大切な目印でした。画面だけでは、その役割を置き換えられませんでした。

そこで、製番票は紙のまま残すことにしました。そのかわり、製番票にバーコードを印字し、それを読み取って実績を入力する形に変えました。紙の分かりやすさはそのままに、入力の手間と間違いを減らせます。

「すべてをデータにすること」が目的ではありません。紙のまま残すもの、つなぐもの、仕組みへ移すものを決めることが、現場で使われる仕組みには欠かせません。

現場の反応の変化

最初は、今までのやり方を変えることへの抵抗もありました。それでも、使い続けるうちに、現場や管理側から次のような声が出るようになりました。

  • 「聞かなくても分かる」:進み具合を画面で確かめられるので、問い合わせや口頭での確認が減った
  • 「遅れに先に気づける」:納期に遅れそうな製番を、早い段階で共有できるようになった
  • 「自分たちで直したい」:現場から、入力の仕方や画面の見せ方について改善の要望が出るようになった

結果

  • 作業時間の削減:月900時間(複数の部署・工程を合わせた、現在の数字)
  • 受注から実績までを、一つの記録で追えるようになった
  • 納期遅延のリスクに、先回りして手を打てる体制になった
  • 物流から始まった仕組みは全社に広がり、今では170名を超える人が使っている

※代表のニシザワが Claris Engage Japan 2022 で紹介した「8年間で作業時間2万7千時間以上の削減」は、2022年時点・講演で扱った取り組みの範囲での数字です。月900時間は、その後に広がった部署・工程も含めた現在の数字です。

これからの改善

次に取り組んでいるのは、作業実績と原価のつながりを広げ、見積の根拠として使えるようにすることです。実績から見えてくる原価と、見積で置いた原価を比べ、その差の理由を次の見積に生かします。考え方は製造業の見積原価と実績原価を比較する。差の理由を次の見積へ生かす方法でも紹介しています。

この事例から伝えたいこと

  • 全部を一度にシステムにせず、手間がいちばん多い業務(ここでは作業実績の入力)から始める
  • 紙をなくすことを目的にしない。現場の目印になっている紙は残し、バーコードなどでつなぐ
  • 現場が「自分たちで直したい」と言える状態をつくると、仕組みは育ち続ける

リナークでは、今の仕事の流れを一緒に書き出すところから、仕組みづくりと運用後の改善までお手伝いしています。「工程の進み具合が見えない」「転記に追われている」といった段階からご相談いただけます。ほかの事例は事例で、ご相談はお問い合わせからどうぞ。

まず一つの仕事を書き出してみませんか。

きれいな資料にする必要はありません。紙やホワイトボードに、箱と矢印で書くだけでも構いません。システムを作るか決まっていない段階でも、業務整理から相談できます。

一つの受注、一つの製品、一つの業務について

  1. 誰が関わっているか
  2. 何を受け取っているか
  3. 何を見て判断しているか
  4. 結果をどこへ残しているか
  5. 次回に生かせる情報が残っているか