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製造業の在庫が合わない5つの原因と最初に見直す場所
製造業で在庫数や棚卸差異が合わない5つの原因を解説します。入力ミスだけでなく、現物が動く時点、記録のタイミング、仕掛品、不良・廃棄などの例外処理を確認し、差異が多い一つの品目から在庫フローを整理して再発防止につなげる方法を紹介します。

こんにちは。リナークのニシザワです。
月末の棚卸でシステム上は100個ある材料が、倉庫で数えると93個しかない。入出庫履歴を調べても7個の差がどこで生まれたのか分からない。
このような在庫差異に悩んでいる製造会社は少なくありません。
在庫が合わない主な原因は、次の5つに整理できます。
- 現物が動く時点と記録する時点がずれている
- 材料、仕掛品、完成品などの在庫定義が統一されていない
- 不良、廃棄、返品、端材などの例外処理が決まっていない
- 同じ情報を紙、Excel、システムへ転記している
- 数量を修正しても原因や判断理由が記録されていない
在庫差異は、入力する人の注意不足だけで起きるものではありません。
在庫は、入荷、払出、加工、工程移動、不良、完成、出荷といった仕事の結果として変化します。現物の動きと記録の流れが合っていなければ、正しく入力しようとしても数字はずれていきます。
この記事では、在庫差異が繰り返される理由と差異が多い一つの品目から始められる整理方法を紹介します。
月末に数量を直しても翌月また差異が起きる
例えば、月末の棚卸で材料が7個不足していたとします。
倉庫担当者が現場へ確認するとさまざまな話が出てきます。
- 急ぎの仕事で先に材料を持ち出した
- 一部を加工し、次の工程を待っている
- 不良になった材料を廃棄した
- 端数を別の棚へ置いた
- 別の現場へ材料を移した
- 返品する品物を倉庫の隅へ置いた
どれも仕事を止めないために行われた対応かもしれません。しかし、記録が残っていなければ、どの出来事が7個の差につながったのか確認できません。
棚卸を終えるため、最後はシステム上の数量を93個へ修正します。数量は合いますが、原因は残りません。翌月も同じ場所で差異が発生し、また履歴と現物を調べることになります。
必要な修正を行うこと自体が問題なのではありません。数量を直すだけで、差異が生まれた仕事の流れを振り返れないことが問題です。
在庫は、仕事の結果として変化する数字
在庫数は、倉庫だけで独立して存在する数字ではありません。
材料であれば、発注し、入荷し、検品し、倉庫へ格納します。その後、製造現場へ払い出し、加工され、仕掛品を経て完成品になります。途中で不良、廃棄、再加工、工程間の移動が起きることもあります。完成品は入庫され、受注へ引き当てられ、最後に出荷されます。
このどこかで現物だけが動き、記録が次のまま止まれば、在庫は合わなくなります。
例えば、入荷した材料をどの時点から在庫として数えるでしょうか。
- 工場へ到着した時点
- 数量を確認した時点
- 検品に合格した時点
- 倉庫へ格納した時点
どれか一つだけが正しいわけではありません。会社の仕事に合う基準を決め、購買、検品、倉庫、製造が同じ意味で使えることが大切です。
在庫管理は、倉庫担当者だけの仕事ではありません。前後にある購買、製造、品質管理、出荷、営業、経理の仕事とつながっています。
現物と記録のタイミングがずれている
製造現場では、現物を動かした瞬間に入力できるとは限りません。
- 急ぎの作業で材料を先に持ち出す
- 一日の終わりに日報をまとめて書く
- 夜勤分を翌朝の担当者が入力する
- 工程間の移動を完成時にまとめて登録する
- 出荷実績を翌日に登録する
- 入荷しているが検品前なので在庫へ登録しない
これらは、現場の事情に合わせた合理的な運用である場合もあります。一時的に現物と記録がずれること自体をすべてなくす必要はありません。
確認したいのは、後から誰が記録するのか、その期限が決まっているか、未処理を見つけられるかです。
リアルタイム入力を求めた結果、作業の手を止めたり、入力自体が続かなくなったりしては意味がありません。作業の区切り、交代時、容器の移動時など、現場で無理なく記録でき、漏れも確認できる時点を決めます。
同じ「在庫」でも部門によって見ている数字が違う
「在庫はいくつありますか」と聞いたとき、部門によって答えが違うことがあります。
倉庫は、棚に実際にある数量を見ています。
製造は、現場へ払い出された材料も使えると考えているかもしれません。
営業は、倉庫にあっても受注へ引き当て済みの数量を除いて考えます。
購買は、まだ届いていない発注残も含めて先の不足を見ています。
経理は、月末時点で会社が保有する在庫金額を確認します。
ここで主な言葉を簡単に分けてみます。
- 実在庫:実際に数えた数量
- 帳簿在庫・理論在庫:入出庫などの記録から計算した数量
- 引当在庫:受注や製造予定のために使用先が決まっている数量
- 使用可能在庫:現在の在庫から引当などを除き、新しい用途へ回せる数量
- 発注残:注文済みで、まだ入荷していない数量
- 仕掛品:製造を始めているが、完成していない物
不良品、返品予定品、外注先への支給品、顧客からの預かり品も工場内外には存在していても自由に使える在庫とは限りません。
同じ「在庫」という言葉でも見ている範囲が違えば数字は合わないように見えます。まず、何の判断に使う数量なのかを明らかにする必要があります。
部門ごとに別の在庫表が増える背景には、それぞれが必要な数量を既存の仕組みだけでは確認できない事情があります。なぜExcelは増え続けるのか。現場が必要な情報を補ってきた結果です。では、現場が不足する情報を補うために管理表を作る構造を詳しく紹介しています。
材料と完成品の間にある仕掛品が見えていない
製造業では、材料が倉庫からなくなった後、完成品になるまでの間に仕掛品が存在します。
材料を現場へ払い出し、一部を加工し、次工程を待つ。外注先へ渡している。複数の材料を組み合わせている。一つの材料から複数の製品と端材が生まれる。この途中の状態が記録されていないと材料在庫は減っているのに、完成品在庫はまだ増えていません。
現物は工場内や外注先に存在しますが、帳簿上は見えない状態です。材料の不足に見えても実際には工程途中にある場合があります。
ただし、すべての工程を細かく記録すればよいわけではありません。入力する場所を増やしすぎると現場の負担が増え、かえって記録が続かなくなります。
納期を確認するために必要か。使用材料や原価を振り返るために必要か。数量が大きく変化する場所か。こうした目的から記録する工程の単位を決めます。
不良、廃棄、返品などの例外が記録されていない
通常の入荷や出荷より、差異の原因になりやすいのが例外時の処理です。
- 不良、廃棄、再加工
- 返品、戻入
- サンプル使用、社内使用
- 端材、余り材
- 代替材料
- 倉庫間、現場間の移動
- 外注先への支給
- 顧客からの預かり品
- 入荷時の不足や過納
- 棚卸時の数量修正
通常とは違う出来事が起きたとき、担当者は納期や作業を止めないためにその場で対応します。しかし、口頭連絡や個人のメモだけで終わると現物は動いても正式な記録へ反映されません。
最初からすべての例外を洗い出す必要はありません。毎月起きるもの、金額が大きいもの、欠品や納期へ影響するものから整理します。
「不良を発見したら誰へ伝えるか」「再加工と廃棄を誰が決めるか」「在庫を減らす記録はいつ行うか」のように、物の扱いと記録を一緒に決めることが大切です。
単位や換算がそろっていない
正しく入力していても単位の関係が決まっていなければ差異は生まれます。
例えば、材料は箱で購入し、在庫は個数で管理し、現場では重量で使用することがあります。kgで購入した材料をmや枚数へ換算する場合もあります。一枚の材料から複数の製品を取り、端材が残る仕事では、計画上の使用量と実際の使用量が同じにならないこともあります。
必要なのは、すべてを無理に一つの単位へ変えることではありません。
- 購入するときの単位
- 在庫を数える単位
- 現場で使用する単位
- 原価を計算する単位
この関係と換算基準を決めます。小数点以下の扱い、荷姿やロットによる違い、歩留まりも確認します。
紙、Excel、システムへの転記で数字が分かれる
現場は紙へ払出数量を書き、事務担当者がExcelへ入力し、月末にシステムへまとめて登録する。さらに報告用Excelへ集計する。このように同じ出来事を何度も転記すると入力漏れや時点の違いが生まれやすくなります。
紙やExcelが悪いわけではありません。紙は現場で素早く記録する役割を担い、Excelはシステムにない集計を補っているかもしれません。
確認したいのは、どの記録を正式なものとするか、最初に記録した情報を次の仕事へどう流すかです。紙をなくしても、業務は改善しない。問題は転記と情報の分断です。では、紙をなくすことより、同じ情報を何度も入力する流れを見直す考え方を紹介しています。
棚卸差異を数量修正だけで終わらせない
棚卸で差異が見つかったとき、実在庫へ数量を合わせる修正が必要な場合はあります。
その際、修正後の数量だけでなく、次の情報を残します。
- 修正日時と対象品目
- 修正前数量、実在庫数量、差異数量
- 保管場所
- 原因分類
- 確認した内容と修正理由
- 対応者
- 今後の対策
すべてを長文で書く必要はありません。「払出記録漏れ」「保管場所違い」「単位・換算違い」などの原因を選び、必要なときだけ補足を加える方法でも構いません。
原因を特定できないこともあります。その場合は「原因不明」を選べるようにします。原因不明を隠すより、同じ品目、工程、時間帯で繰り返されていないかを後から確認できることの方が大切です。
最初は、入荷記録漏れ、払出記録漏れ、出荷記録漏れ、工程移動の未記録、不良・廃棄の未記録、返品・戻入の未記録、保管場所違い、品目取り違え、単位・換算違い、数え間違い、登録タイミングのずれ、マスタ設定の誤り、原因不明といった分類で十分です。実際の記録を見ながら自社で使いやすい分け方へ育てます。
一つの品目から物と記録の流れを整理する
最初から全品目、全倉庫、全工程を対象にする必要はありません。差異が多い材料や製品を一つ選びます。
- 入荷から出荷まで物が動く場面を書く
- 各地点で誰が物を動かすか確認する
- どの時点で誰が数量を記録するか確認する
- 紙、Excel、システムなどの記録する場所を並べる
- 不良、廃棄、返品、移動などの例外を加える
- 現物だけが動く場所へ印を付ける
- 後からまとめて入力する場所へ別の印を付ける
- 在庫の意味や単位が違う場所を確認する
- 最初に改善する場所を一つ決める
次の表を使うと専用のシステムがなくても整理できます。
| 確認項目 | 記入内容 | | ------- | ---------------- | | 対象品目 | 差異を確認する材料・製品 | | 物が動く場面 | 入荷・払出・移動・完成・出荷など | | 担当者 | 誰が物を動かすか | | 記録する時点 | いつ数量を登録するか | | 記録する場所 | 紙・Excel・システムなど | | 在庫の状態 | 材料・仕掛品・完成品など | | 例外 | 不良・廃棄・返品・端材など | | 判断 | 誰が何を基準に決めるか | | 困っていること | 未入力・転記・単位違いなど | | 改善候補 | 最初に見直す場所 |
最初の改善場所は、差異の頻度、金額、欠品時の影響、関係する部門、転記回数から選びます。材料の現場払出、不良品の処理、完成品の入庫、倉庫間移動、出荷実績の登録などの一つの受け渡しで十分です。
箱と矢印を使った具体的な書き方は、製造業の業務フローを箱と矢印で書き出す10の手順で紹介しています。今回は一つの品目に範囲を絞り、物の流れと記録の流れを二つ並べてみてください。
システムを入れても在庫が合わない理由
在庫管理システムやERPを導入しても現物が動いた後に入力されなければ数字は合いません。
入力時点が決まっていない。品目や単位の意味が部門ごとに違う。例外処理をシステム外で行っている。現場の作業と入力画面が合っていない。修正理由が残らず、現場がシステム上の数字を信用していない。
この状態で新しいシステムへ置き換えても今までのずれを新しい画面へ移すだけになる可能性があります。
システムが悪い、現場が悪いと決めつける前に、物の動きと記録の流れがどこで離れているかを確認します。そのうえで、現場が記録しやすく、後工程が同じ情報を使える仕組みを考えます。
在庫が合うことは、次の仕事を正しくする土台
在庫管理の目的は、棚卸差異を小さく見せることではありません。
在庫情報を信頼できれば、必要な材料を適切な時期に発注できます。営業は納期を回答しやすくなり、製造は予定を立てやすくなります。仕掛品や滞留在庫も確認しやすくなります。
原価や利益を振り返るうえでも在庫は重要です。材料使用量が分からなければ、製品にどれだけ材料を使ったのか確認できません。仕掛品が見えなければ、工程途中にどれだけの物や金額が滞留しているのか分かりません。不良や廃棄が記録されなければ、実際の損失も見えにくくなります。
在庫数量を信頼できない状態では、その数字をもとにした原価や利益の判断も難しくなります。
差異の原因を次の改善へ生かす
在庫差異が起きるたびに数量だけを修正すると会社には修正後の結果しか残りません。
一方で、どの業務で差異が生まれたのか、どの例外が原因だったのか、誰が何を確認して修正したのか、どの対策を行い、翌月どう変わったのかまで残せば、差異を次の改善へ生かせます。
例えば「原因不明」が同じ材料の夜勤後に集中しているなら、交代時の記録方法を確認できます。「保管場所違い」が特定の工程で続いているなら、移動時の記録や置き場を見直せます。
一度で差異をなくすのではなく、原因の多い場所から一つずつ減らしていく。その結果を確認し、次の改善へ進む。この循環が、在庫管理における「会社が学び続ける仕組み」です。
システムを作って終わらない。会社が学び続ける仕組みをつくるでは、仕事の結果だけでなく、判断、理由、例外、改善履歴を会社へ残す考え方を紹介しています。
まとめ
在庫が合わないとき、最初に確認したいのは担当者の注意力ではありません。
- 現物が動く時点と記録する時点は合っているか
- 材料、仕掛品、完成品などの意味はそろっているか
- 不良、廃棄、返品、端材などの例外が残っているか
- 購入、在庫、使用、原価の単位はつながっているか
- 数量修正の原因と判断理由を振り返れるか
在庫差異は、仕事と情報の流れが一致していないことを知らせる症状です。
まずは、差異が多い品目を一つ選んでください。入荷から出荷までの物の動きと記録を並べ、現物だけが動く場所、後から入力する場所、例外が口頭で処理される場所へ印を付けます。
すべてを一度に変える必要はありません。一つの受け渡しを改善し、その後の差異がどう変わったかを確認するところから始めます。
在庫管理では、数量だけでなく判断も人に依存しています。どの材料を代替してよいか、どの端材を残すか、どこまでを使用可能在庫とするか。このような判断基準が特定の担当者の経験だけにあると仕組みを整えても迷いは残ります。
次の記事では、ベテランが何を見て判断しているのかを会社の知識として残す方法を考えます。
まずは自社で試してみてください
- 差異が多い品目を一つ選ぶ
- 物が動く場面を書き出す
- 誰がいつ記録しているか確認する
- 不良、廃棄、移動などの例外を加える
- 現物だけが動く場所と後から入力する場所へ印を付ける
現在使っている在庫表、入出庫票、作業日報などを見ながら、どこで現物と記録がずれているのかを一緒に整理することもできます。新しいシステムを導入するか決まっていない段階でも在庫の流れや記録方法の整理から相談できます。
よくある質問
在庫差異をゼロにすることはできますか
差異を完全になくすことだけを最初の目標にすると確認や入力が増え、現場の負担が大きくなる場合があります。まずは、差異が起きた場所と原因を追える状態をつくり、頻度や影響の大きい原因から減らします。
棚卸の回数を増やせば在庫は合いますか
棚卸を増やすと差異を早く見つけやすくなります。しかし、現物の動きと記録がずれる場所が変わらなければ、同じ差異は繰り返されます。差異を発見した後に、原因を記録して流れを見直すことが必要です。
バーコードを導入すれば解決しますか
バーコードは品目の取り違えや入力負担を減らすために役立ちます。ただし、いつ読み取るか、例外時にどう処理するか、品目や単位をどう定義するかが決まっていなければ、それだけで在庫が合うとは限りません。
Excelでの在庫管理はやめるべきですか
先にやめる必要はありません。Excelがどの情報を補い、誰の判断を支えているかを確認します。そのうえで、正式な記録をどこに置くか、同じ情報の転記をどこから減らすかを決めます。品目数や利用者、更新回数が増え、複数の表への転記や最新版の確認が必要になっている場合は、Excelだけで管理を続けるよりも、正式な記録を一元化する仕組みを検討する時期かもしれません。
仕掛品はどこまで管理すべきですか
すべての工程を同じ細かさで管理する必要はありません。数量が大きく変わる工程、納期や原価の確認に必要な工程、滞留を把握したい工程など、管理する目的に応じて記録点を決めます。



