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システムを作って終わらない。会社が学び続ける仕組みをつくる

システムを導入しても属人化やExcelが残る製造業へ。リナークが業務整理から始め、判断・実績・改善履歴を会社の知識として残す理由とAI活用や内製化につながる土台を紹介します。

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こんにちは。リナークのニシザワです。

営業担当者は、受注内容をメールとExcelで管理している。製造予定はホワイトボードに書かれ、作業実績は紙の日報に残る。在庫は別のExcelで管理し、原価は月末に担当者が集計する。急ぎの案件が入ると、口頭で現場へ伝える。

これは、製造業でよく見られるケースです。

それぞれの担当者は、仕事を止めないために懸命に対応しています。問題が起きれば、経験のある社員がその場で判断し、納期や工程を調整します。

そのおかげで、今日の仕事は進みます。

ところが、なぜその判断をしたのか、どのような例外が起きたのか、次はどうすればよいのかが会社に残っていません。翌月に似た問題が起きると、別の担当者がまた一から確認することになります。

仕事は進んでいる。しかし、会社として経験から学べていない。

私は、製造業の業務システムに関わる中で、この状態が多くの問題につながっていると考えるようになりました。

システムを導入しても、同じ問題が繰り返される

こうした問題を解決しようとすると、紙をなくす、Excelを禁止する、新しい生産管理システムやERPを導入する、AIを使う、といった方法が候補に挙がります。

もちろん、道具を変えることが必要な場合もあります。

ただし、現在の仕事の流れや判断を整理しないまま道具だけを変えると、紙への記入がシステムへの入力に変わり、口頭の指示がチャットに変わるだけになることがあります。必要な情報がシステムから得られなければ、現場は再びExcelを作って補います。

Excelが増えるのは、現場の管理が悪いからとは限りません。仕事を進めるために必要な情報を現場が自分たちで補ってきた結果でもあります。この背景については、「なぜExcelは増え続けるのか。現場が必要な情報を補ってきた結果です。」で詳しく書きました。

紙もExcelも、それ自体が問題なのではありません。

確認すべきなのは、同じ情報を何度も転記していないか、判断に必要な情報が担当者へ届いているか、仕事の結果が次の工程へつながっているかです。「紙をなくしても業務は改善しない。問題は転記と情報の分断です。」でお伝えしたかったこともここにあります。

問題は、道具の新しさよりも仕事、情報、判断が分かれたままになっていることです。

現場で続けてきた支援が、一つの言葉につながった

リナークは、製造業を中心に業務システムを作り、その後の運用も支援してきました。

実際の支援では、最初から画面や機能を決めることはできません。

現在使っている紙やExcelを見ながら誰が何を受け取り、何を確認し、どこで判断し、次の人へ何を渡しているのかを聞きます。仕組みを作った後も実際に使ってみると新しい問題や改善点が見つかります。

その結果を確認し、仕事に合わせて仕組みを変えていきます。

こうした支援を続ける中で、私たちが提供しているものは、完成したシステムだけではないと感じるようになりました。

その考えをあらためて言葉にするきっかけになったのが、Microsoft CEOのSatya Nadella氏によるAI時代の企業についての投稿です。

Nadella氏は、人が持つ知識、判断、関係、創意、経験を「human capital」とし、AIを使って企業の生産能力を高める側の資本を「token capital」と表現しています。そして、人とデジタルシステムの間に認知的な循環をつくり、その循環を企業の知的資産にしていく重要性を述べています。

この投稿を読んだとき、リナークが現場で行ってきたことと重なる部分があると感じました。

業務を聞く。仕事の流れを言葉にする。判断や実績を残す。使った結果を確認する。仕組みを変える。そして、次の仕事に生かす。

リナークが本当につくろうとしているのは、システムだけではなく、会社が経験から学び続けられる状態なのだと思います。

会社が学び続けるとは、仕事の結果だけでなく、仕事の流れ、判断基準、理由、例外、改善履歴が会社に残り、次の仕事や改善に生かされる状態です。

その状態をつくるために、私たちは次の5つの変化を大切にしています。

会社が学び続けるためにつくる5つの変化

1.業務を言語化する

製造現場には、経験を積んだ人だからこそできる判断があります。

価格を決める。工程順を組む。設備を割り当てる。材料を手配する。納期を回答する。不良が起きたときの対応を決める。

こうした判断は、単純な手順書だけでは表せないことがあります。それでも、判断に使っている情報、参考にした過去の案件、例外となる条件、困ったときの相談先を残すことはできます。

リナークでは、システムの画面を考える前に誰が、何を受け取り、何を見て判断し、何を次へ渡しているのかを関係者と一緒に確認します。

経験をすべてルールへ置き換えることが目的ではありません。経験のある人が何を見ているのかをほかの人も確認できる状態へ近づけることが目的です。

システムを探す前に業務を書き出す理由については、「紙とExcelの管理から抜け出す!最初の一歩は『業務を書き出す』こと。」でも紹介しています。

2.業務を仕組みにする

業務を書き出したら、情報の入口と出口を確認します。

受注時に入力した品名、数量、納期を、製造指示、材料手配、出荷、請求へ渡せないか。作業実績を進捗確認だけでなく、原価や次回見積にも使えないかを考えます。

一度入力した情報が次の仕事へ流れれば、転記や二重入力を減らせます。同じ情報でも営業、製造、経営者がそれぞれ必要とする見方を用意できます。

ここでも紙やExcelを最初から捨てることはしません。

なぜその帳票が必要なのか。Excelで何を補っているのか。誰がどの場面で見ているのかを確認し、残すもの、つなぐもの、仕組みへ移すものを決めます。

3.会社の知識を資産にする

会社に残したいのは、受注数、作業時間、在庫数といった結果だけではありません。

なぜその価格にしたのか。なぜ通常と違う工程にしたのか。なぜその案件を優先したのか。不良の原因をどのように考え、何を変更したのか。

結果と一緒にその理由や例外を残すことで、過去の仕事を次の判断に生かせるようになります。

例えば、予定より原価が高くなった案件について、作業時間だけでなく、材料変更、設備トラブル、追加作業の内容まで確認できれば、次の見積や工程計画に反映できます。

これは、個人の経験を会社が奪うことではありません。経験を持つ人が積み上げてきたものを次の人も参照し、学べる形にすることです。

4.AIが活用できる状態をつくる

AIを導入すれば、すぐに会社の仕事を理解してくれるわけではありません。

品名や工程名の意味が人によって違う。実績が紙とExcelに分かれている。判断理由が残っていない。この状態では、AIが参照できる情報も限られます。

AIを実務で使うには、業務やデータ項目の意味、マスタ、実績、判断理由、例外対応を整理する必要があります。さらに、AIが示した候補や注意点を人が確認し、役に立ったか、誤っていたかを評価する運用も必要です。

例えば、AIが過去の類似案件から工程や納期の候補を示しても、設備の状態や顧客との関係まで含めた最終判断は人が行わなければなりません。その判断結果をまた残すことで、次に参照できる情報が増えていきます。

リナークが行ってきた業務整理、マスタ整理、データ設計、実績の蓄積は、AIを実用的に活用するための土台にもなります。

5.お客様自身が改善を続けられる状態にする

システムを納品した時点で、その会社にとっての完成形が分かるとは限りません。

実際に使うことで、入力しにくい場所、足りない情報、残すべき判断、新しい例外が見つかります。その結果を確認し、仕組みを変更し、改善前後を比べる必要があります。

リナークが考える内製化は、FileMakerなどの操作を覚えることだけではありません。

お客様自身が、現在の業務を説明し、問題が起きている場所を見つけ、改善案を考え、結果を確認できるようになることです。

すべてを社内だけで行う必要はありません。専門的な設計や大きな変更では外部の力を使いながらも、何を変えるべきかをお客様自身が判断できる状態を目指します。

会社が学べるようになると、仕事はどう変わるのか

仕事の流れ、判断、実績、改善履歴がつながると、ベテランが不在でも過去の判断を確認できます。新しい担当者は、作業手順だけでなく、なぜその確認が必要なのかを学べます。

在庫が合わないときも、数量を修正して終わるのではなく、どの入出庫や例外処理から差異が生まれたのかを追えるようになります。

原価が変わったときは、材料価格だけでなく、工程変更や作業時間との関係を確認できます。問題が起きたときも、誰かの注意不足と決めつける前に仕事と情報の流れを見直せます。

AIもこうして蓄積された実績を比較し、過去の類似案件や注意点を示す役割を持てるようになります。

大切なのは、AIへ判断をすべて任せることではありません。人が提案を評価し、その結果をまた会社へ残すことです。

会社が一度に大きく変わるわけではありません。それでも、一つの問題から学んだことが次に残れば、昨日より少しだけ判断しやすい会社になります。

FileMakerやAIは、その状態をつくるための手段

FileMakerは、業務に合わせて小さく作り、使いながら変更していくための手段です。ERPは、販売、製造、在庫、会計など、部門を越えて情報をつなぐ基盤になります。AIは、蓄積された情報を参照し、人の判断や改善を支える手段です。

弊社が開発したPSI VISION®は、「作る・売る・在庫・利益」の情報をつなぐ仕組みです。

また、ご提供した各種システムについても、運用手順や結果を特定の担当者だけに依存させず、履歴を残し、安定運用と次の改善につなげるための継続的な支援を行っています。

どの手段が適しているかは、会社や業務によって異なります。

先に製品を決めるのではなく、まず仕事を聞き、整理し、小さく仕組みにする。使った結果を見て、お客様と一緒に育てる。これが、リナークの進め方です。

まず一つの業務から、会社の学び方を変える

会社全体を一度に整理する必要はありません。

まず、一つの受注、一つの製品、一つの業務を選び、次のことを確認してみてください。

  1. 誰が関わっているか
  2. 何を受け取っているか
  3. 何を見て判断しているか
  4. 結果をどこへ残しているか
  5. 次回に生かせる情報が残っているか

きれいな資料にする必要はありません。紙やホワイトボードに、箱と矢印で書くだけでも構いません。具体的な書き出し方は、「製造業の業務フローを箱と矢印で書き出す10の手順」で紹介しています。

現在使っている紙やExcel、帳票を見ながら、仕事の流れや判断をどこから会社に残すべきか、一緒に整理することもできます。システムを作るか決まっていない段階でも、業務整理から相談できます。

現在の業務を一緒に整理する

在庫差異が起きるたびに数量だけを修正しても入出庫の流れ、例外対応、修正理由が残らなければ、同じ問題は繰り返されます。

次の記事では、在庫が合わなくなる原因を入力ミスだけではなく、仕事と情報の流れから考えます。

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